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心理カウンセラー 西たかおです。
今日は千葉県の少年院で加害者のための授業に参加してきました。

私は対話の会というNPOに属しています。
ひとことで言うと、対話による相互理解によって、被害者が癒され、加害者が本当の意味で立ち直れるという考え方で活動する団体です。詳しくはリンク先をご覧ください。

対話の会:
http://www.taiwanokai.org/

その活動の一環で、10年前から千葉県の少年院で月に一回の授業を行っています。
被害者の視点を取り入れた教育によって、加害少年たちが上っ面ではなく本当の意味で更生することを目的としています。

私は昨年1月から毎月参加させていただいています。

グループワークで全員と向き合い、個別のワークやカウンセリングで個人と向き合います。

彼らとの会話は真剣勝負です。
彼らは知能が高く、人を見抜く能力に長けています。
生半可な態度では、大人が喜びそうな綺麗事だけを話すだけの無駄な時間となってしまいます。
逆に、真摯に向き合うと、彼らは腹を割って語ってくれます。

彼らとの会話を通して私自身、色々な思い込みから解放されました。
イジメの被害者、加害者、毒親と言われる親と引きこもりの子ども、誰と合うときもフラットでいられるようになったのは彼らのおかげかもしれません。

語りたい気づきは山ほどありますが、まずは私を変えた大きな気づきをシェアしたいと思います。

加害者は被害者のひとつの形

彼らは加害者です。
話を聴くととんでもないことをしでかしていて、プロフィールを読むとモンスターとしか思えません。

報道で描かれる彼らはモンスターの側面だけが強調されているので、そこだけ見ると重い罰を与えて二度と出てこないでほしいと思ってしまいます。

正直、私も初授業の時は緊張で血の気が失せていました。
どんなモンスターかと想像していたんですね。

しかし、彼らに面と向かい、深掘りして人生をさかのぼっていくと、意外なことがわかってきます。

少年院に入院している少年たちの大半は、虐待の被害者だったり、学校でひどいイジメを受けていたのです。
内容は詳しく書きませんが、虐待の内容はほんとうにひどいもので、生きているのが不思議なくらい。

親から子へのコミュニケーションが暴力であり、まともな愛情をかけてもらえず、周囲に理解してもらおうにもそのやり方がわからない。
誰にも理解されない孤独。
あるとき、自分を理解してくれる仲間が現れた。
それが不良仲間だった。
こんな流れで、非行の道に進んでしまいます。

もし仲間がいなければ、精神的に病んでしまったでしょう。
実際、うつを経験した院生も何人もいました。

一般的な社会に適応できるだけの生き方を学べなかったことは彼らにとって不幸としか言いようがありません。

暴力の中で育ったら、暴力しか表現法がないのです。
幸せになりたいと願う気持ちがあっても、暴力や他人から奪うことしか知らなければどうにもなりません。
彼らが主張すればするほど、周囲は彼らを排除し、さらに行き場がなくなります。

そのような負のスパイラルの中で、被害者が生まれているのです。

彼らが自分で犯罪の道を選んだのだから自己責任、過去がなんであれ許す必要はない、という人がいます。
被害に遭われた方からすると、彼らを許せない気持ちがあるのは当然です。
犯した罪に対して許す必要はないでしょう。

ただ、彼らは自分から加害者になったわけではなく、自分の意志とは関係なく、その道に進まざるを得なかった側面があることを忘れてはなりません。

私が彼らと同じ境遇に生まれ、育っていたら、同じような加害者になっていたかもしれません。
そう考えると、彼らと私の差は運が良かったかどうかでしかないのです。

謝罪や許しは、相手を深く理解することから生まれる

少年院では院の先生方や私のような外部スタッフが彼らの理解者となり、彼らが学ぶ機会を持てなかった信頼関係や愛情といったものを再教育しています。

同時に被害者についても学びます。
彼らは被害者についてほとんど考えておらず、考えるだけの材料もありません。

そこで被害者にも家族や恋人がいて、守るべきものや将来の夢があり、それらが奪われ、傷つき、悩み、苦しむいち人間であることを理解する手助けをします。

相手の苦しみを理解したとき、彼らは変わり始めます。

その後対話の会を通じて、加害者の方から本当の被害者に直接謝りたいという話が出ることもあります。

本当の謝罪や許しは、相手を深く理解することで初めてなされるのです。

人々はみな、自らの幸せのために最大限努力している

このような体験を通して、私は次のような気づきを得ました。

人々はみな、自らの幸せのために最大限努力している。
ただ、幸せになる方法を知らないがゆえに、苦しんでいる。

どんな劣悪な環境に生まれた人も、障害を持って生まれようとも、その人は、自分の幸せを追い求めるものです。

ただ、本当の幸せに向かう道筋を知らず、あるいは見失ってしまったばかりに、苦しみと隣り合わせの人生を歩んでしまうのです。

自分から足を踏み外してしまう。
努力せずに一歩も前に進まない。
自業自得。

客観的にそのように見える人もいるでしょう。
しかし、本人の内面を知ることで、それが必然的に起こっていることがわかります。
無知や不適切な習慣に妨げられ、自分の力ではどうしようもなくなっているのです。

私はこのことに気づいてから、他人を批判的に見ることを止めました。
事情もわからず単純に判断するのがとても愚かに思えます。

おかげで今は誰と会うときも、ほぼフラットな平常心でいられるようになりました。
そして、相手の幸せのためのお手伝いがとてもやりやすくなったのです。

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